平成12年度中国・四国地区国立大学工学部技術職員合同研修会

(平成12823日〜25日 徳島大学)


報告者:愛媛大学工学部技術部環境建設工学技術班  川口 隆 技官

平成12年8月23日〜25日の3日間徳島大学において行われた平成12年度中国・四国地区国立大学工学部技術職員合同研修会発表会に川口と重松和恵文部技官の両名が参加した.

徳島大学工学部長川上博先生の講話にはじまり,徳島大学の技術職員を中心とした技術講演ならびに実験・実習,また,各大学の若手技術職員より日頃の研究の成果等を発表致し,活発に議論や意見交換等を行った.

最終日には公共事業のあり方として議論を呼んでいる徳島県吉野川第十堰を建設省徳島工事事務所の方々の説明のもと見学させて頂いた.この研修へ参加した感想等交えながら研修報告をさせていただく.


8月23日(1日目) 

講話 徳島大学工学部長 川上 博 氏

少子化や学力低下問題等の話題を織り交ぜながら21世紀社会における大学教育のあり方についてお話があった.徳島大学工学部としての取り組みの説明があり,国際基準に合致した社会に求められ受け入れられる資質の高い学生を社会に送り出すため,それらに対応するJABEE に関連するカリキュラムや教育体制問題等を分かりやすく語られた.

 

服務について 徳島大学総務部人事課長 次原秀明 氏

職場におけるセクシャルハラスメント問題について各事例を紹介したビデオを鑑賞し,それぞれについて討議形式で意見交換を行い問題の解消や意識の向上をはかった.

 

寿命を迎えるコンクリート構造物 徳島大学工学部建設工学科長 水口裕之 氏

明治期からひろく建設材料として使用されてきたコンクリートについてその歴史や技術の進歩を広義にわたりわかりやすくポイントをおさえて講演があった.

技術講演

1.技術専門官 小松敏行 氏

自らが開発した極小計測技術の解説から技術者としての経験豊富な知識を我々若い技術者に考え方のアプローチなどを含め,意識を高揚させる内容であった.

2.技術専門職員 長谷川 豊司 氏

X線の基本的な話からはじまり,計測への応用も含めた内容で,初心者にも平易にわかる内容であった.

3.技術専門職員 田村 宏文 氏

PIC(マイクロコンピュータ)の基盤のモデルから,プログラミングの方法など,実験機器への応用も含めた内容であった.


8月24日(2日目)

発表会

 発表会は下記の各大学の技術職員により1件あたり発表15分,質問5分で行われた.

氏 名 所 属 題 目

小田 明道 鳥取大学 リモートセンシングによる湖山池アオコ観測

里本 公明 岡山大学 PTV法による全断面魚道表面流速の測定について

京泉 敬太 広島大学  アンボンド型充填鋼管コンクリート長柱の耐荷力実験

山本 修三 山口大学  山口大学地盤工学研究室の紹介−実験装置の解説−

松本 直通 香川大学 香川大学工学部(安全システム建設工学科)の実験・実習 における現状報告

川口 隆 愛媛大学 油圧式岩盤破砕機による岩盤の破砕に関する基礎的研究

石丸 啓輔 徳島大学 重力による材料落下型連続ミキサの練混ぜ機構の可視化

各大学の中堅・若手の技術職員により,丁寧な解説を交えた発表で活発な意見交換が行え,学会発表とは違った実務的な話を通してこれからの技術職員の未来が垣間見えた発表会であった.

  

実験・実習

 A. 測量実習(多角測量) 技術専門職員 井上 賢太郎 氏

 B. 構造工学実験・実習 技術専門職員 宗田 和之 氏

 C. 気球を用いた空中写真撮影の体験 技術専門職員 梅岡秀博 氏

私は現在の職務が力学系に従事していることから,宗田氏の構造工学実験を受講した.講義ではトラス橋のモデルから設計図面に基づく予想される各部材にかかるひずみや応力を節点法,断面法の計算方法から算出し,その後で実際にモデルに負荷を与え,その算出結果と実験結果との比較を行った.算出や測定過程での説明もフリップやポスターなどを通して説明があり,周到な事前準備に敬服した.  

8月25日(3日目)

見学会 吉野川第十堰 建設省徳島工事事務所

 吉野川の歴史にはじまり,現状の第十堰の問題(堰堤の河床洗堀問題,治水管理の不平等性)の説明があり,可動堰建設構想にまで至った経緯の説明があった.建設省の方針として現状の堰では治水管理上好ましくなく,補修するにしても可動堰建設にしても改善しなければならないと考えられている.公共工事は近年,その必要性が論点からはずれたところで不要論もでているが21世紀にはパブリックインヴォルメントに代表される合意形成の必要性が拡大していくことがこの見学会をとおして予見できた.

写真−1

写真−2

※写真−1 第十堰の外観(見学会)

※写真−2 高地蔵尊(うつむき地蔵) 洪水氾濫時のため地蔵が埋没しないよう高く建立された.

感想と謝辞

今回の研修は中・四国内の大学からたくさんの技術職員の参加があり,とくに発表会では活発な意見交換が行え,大変有意義であった。また,小松技術長をはじめ徳島大学の方々の事前準備もよくなされていた様子が垣間見え,これからの合同研修の方向性を示された内容であった.

最後に研修に際してご助力,ご配慮賜った徳島大学の皆様,研修で一緒に机を並べた技術職員の方々へ感謝の意を表させて頂く.

<研修および報告会><実験・測定機器の紹介><実験・実習の安全事項><業務に関係するリンク集


制作:技術部マルチメディア委員会